序文
AIの世界で今なお根強く残っている神話のひとつに、「AIが十分に強力であれば、デザインは重要ではない」という考え方がある。この議論は、おおむね次のように展開される。モデルが十分に賢ければ、優れたインターフェースなど必要ない。ユーザーはただ話しかけさえすればよく、AIがそれを理解し、すべてはそれで事足りる。やりたいことを伝えれば、後はAIが実現してくれる。UIは時代遅れのもの、まるでWindows 95のような存在と見なされる。
私はこの主張に何年も反論してきた。それは、デザイナーとして自分の領域を守りたいからではない(もちろん、正直に言えば、そうした面がまったくないわけではない)が、何よりもこの議論が現実には成り立たないからだ。そしてありがたいことに、Louise Macfadyenが、これを見事に証明する一冊を書いてくれた。
あなたが手にしている本書は、私にとってきわめて説得力のある議論を展開している。それは、私が以前より抱いていた主張を裏づけてくれるからだけではない。実際、その面もあるがそれ以上に、本書は私の半ば愚痴のような議論を超えて、はるかに実用的で実践的な地点に到達しているからだ。著者は、一見するとシンプルな「入力、計算、出力」というフレームワークを用いながら、それぞれの段階にさまざまな種類の失敗や破綻が潜んでいることを示している。彼女の主張は、「AIの上にデザインを後から付け足せばよい」という類のものではない。いわば「豚に口紅†1」のバージョン3.0ではない。現実の世界の現実の人々にとって、AIシステムがそもそも機能するかどうかを左右する営みこそが、デザインなのだ。
[†1] 訳注:「豚に口紅(lipstick on a pig)」は、英語の慣用表現で、中身は変わっていないのに、見た目だけ取り繕うことを表す。 ...
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