はじめに
なぜ私はこの本を書いたのでしょうか。すでにアルゴリズミックバイアス(アルゴリズムに内在する偏りや偏見、先入観)に関しては多くのことが書かれていますし、実世界でもアルゴリズミックバイアスがもたらす弊害が数多く報告されています。しかしアルゴリズミックバイアスの原因を扱った本や記事となるとグッと数が減り、さらにアルゴリズミックバイアスのもたらす問題の解決や予防、抑制の方法となると、これはもうほとんど知られていない模様です。そこで、そうしたことを扱った本を書きたいと考えました。
この本は実用書です。さっそく明日からでもシステムに導入できる解決法を提案しています。対処法の中にはある程度時間を要するものもありますが、これは壮大な理論を打ち出す本ではなく、段階を追った指針やチェックリストを提示しているほか、持論の例証には実世界の事例を多数あげています。ただ、何より重要なのは、この本がさまざまな状況下で投げかけるべき具体的な質問を提示することで批判的思考を促しているところです。
私はモデル(アルゴリズム)の開発やコンサルティングといった日常業務でアルゴリズミックバイアスにまつわる発見を重ねるうちに、「技術的な問題だけじゃ全然ない」との思いを強くしてきました。たしかにアルゴリズミックバイアスの原因やソリューションは部分的には統計学によって説明できますが、アルゴリズミックバイアスの問題は人間の心理に深く根差しているため、人間自身のバイアスについて理解しなければ、また、ユーザー、データサイエンティスト、広く社会一般のバイアスがいかに意思決定の際にバイアスを生み、増大させているかを理解しなければ、対処できないのです。
そこでこの本では最初から技術的な解決法に踏み込むことはせず、まずはアルゴリズミックバイアスを生む要因やメカニズムを説明した上で、それがアルゴリズミックバイアスへの対策でどういった意味をもつのかを解説します。 ...
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