まえがき
人工生命(Artificial Life、略してALIFE)という言葉を聞いたことがありますか? それは「人工的に作られた生命」を意味します。自然界の生命は絶えず進化し、環境に適応しています。ALIFEの目的は、この進化を人工的に再現することです。この絶え間ない進化は「Open-Ended Evolution」と呼ばれ、日本語では「オープンエンドな進化」と訳されます。この進化は一定の方向性を持たず、まるで自然の中の無限の可能性を探るかのように、思いもよらないような結果を生み出すことが特徴です。この性質はALIFEの多様性と複雑性の増加を促します。それが現実の生命の進化と似た動きを再現し、ALIFEの実現に大きく寄与するのです。
では、コンピュータでこのオープンエンドな進化を実現するためには、どのようにアプローチすればいいのでしょうか? どのようなアルゴリズムが必要でしょうか? それはどのように実装できるのでしょうか?
このオープンエンドな進化の実現を探るキーワードが、「オープンエンドな探索」です。それは生命の進化の仕組みに着想を得て、強化学習や遺伝的アルゴリズムを組み合わせ、発展させたアルゴリズムのことを指します。
従来のアルゴリズムでは、問題を解決するための「目的」を設定していましたが、「オープンエンドな探索」では、「新しさ」や「多様性」に着目して問題を解決する方法を探します。これにより、従来のアルゴリズムでは発見できなかった解を見つけることができます。また、自ら新たな問題を生み出すことで、より複雑な問題を解決することができます。本書では、そんな広がりのある探索である「オープンエンドな探索」を通じて、より効果的な機械学習アルゴリズムについて、その概要と実装を学んでいきます。 ...