7章おわりに
7.1 生成モデルによるオープンエンドなアルゴリズムの新展開
本書はニューラルネットワークを進化させるNEATアルゴリズム、複雑なパターンや構造を生成するアルゴリズムであるCPPNとCPPN-NEATに始まり、オープンエンドの実現を目指した4つのアルゴリズム ─ 新規性探索(3章)、品質多様性(4章)、MCC(5章)、そしてPOET(6章)─ を紹介してきました。従来の問題解決手法が特定の最適解を求めることを中心に据えていたのに対し、これらのアルゴリズムは多様な「解」を生み出しながら複雑な問題に対応することを目指しています。
本章では、これらのアルゴリズムのさらなる可能性を探求します。それは、ChatGPTやBERTなどの大規模言語モデルや、DALL・E 2、StableDiffusion、Midjourneyといった画像生成AIとの融合の可能性を探ることです。このような大規模モデルの生成能力を、新しいものを絶えず生成し続ける特性を持つオープンエンドなアルゴリズムと組み合わせることで、さらなる創造性を引き出すことが可能となります。生成モデルやオープンエンドなアルゴリズムの文脈では、これまで私たちが「解」と呼んでいたものは、「生成物」や「アウトプット」として、または「表現」と捉えられるように変化しているように感じます。具体的な研究例の紹介を通じて、この変容の魅力を感じてもらえればと思います。
7.2 多様なゲームステージを生成する
7.2.1 大規模言語モデルを利用したゲームステージの生成
まず、大規模言語モデルを使って、独創的なゲームステージを容易に作成する研究「MarioGPT」を紹介します。MarioGPT[22]では、よく知られたアクションゲーム「スーパーマリオブラザーズ」のステージ条件を文章で入力するだけで、ゲームステージが自動生成されます。たとえば、「たくさんのパイプ、少ない敵、いくつかのブロック、高い高低差」といった条件を文章で入力すると、その条件に適合したゲームステージが作られます。デモはサイト ...