マスタリング・イーサリアム ―スマートコントラクトとDAppの構築
by Andreas M. Antonopoulos, Gavin Wood, 宇野 雅晴, 鳩貝 淳一郎, 中城 元臣, 落合 渉悟, 落合 庸介, 小林 泰男, 土屋 春樹, 祢津 誠晃, 平山 翔, 三津澤 サルバドール将司, 山口 和輝
5章ウォレット
「ウォレット」という用語は多義であり、イーサリアムが持つ複数の機能や事柄に対して使われます。
広義には、基本ユーザーインターフェイスとして機能するアプリケーションを表します。ウォレットは、ユーザーの資産へのアクセス、鍵とアドレスの管理、残高の追跡、トランザクションの作成と署名といった機能を制御します。さらに一部のイーサリアムウォレットは、ERC20トークンといったコントラクトとやり取りできます。
プログラマーの観点から、より狭い意味で言えば、「ウォレット」という用語は、ユーザーの鍵を保管・管理するためのシステムを指します。ウォレットは鍵を管理する機能を備えていますが、中には鍵を管理する機能しかないウォレットも存在します。他にも、より幅広いカテゴリーの一部に属するウォレットも存在します。たとえばイーサリアムを用いた非中央集権型アプリケーションへのインターフェイスであるブラウザやDAppなどです。これらに関しては12章で詳しく解説します。「ウォレット」という用語でまとめられているカテゴリーの間には、明確な線引きはありません。
この章では、秘密鍵を保存するコンテナ、および鍵を管理するためのシステムとして、ウォレットを解説します。
5.1 ウォレット技術の概要
この節では、利便性、安全性、柔軟性を兼ね備えたイーサリアムウォレットを実現するために使われている、さまざまな技術の概要を説明します。
ウォレット設計における重要な検討事項は、利便性とプライバシーのバランスをとることです。一番使いやすいイーサリアムウォレットとは、すべてのトランザクションに対して、ある1つの秘密鍵とアドレスを再利用するようなウォレットでしょう。残念ながら、そのような設計のウォレットはプライバシーの観点からは望ましくありません。なぜなら誰もがあなたのトランザクションを簡単に追跡し、関連付けることができるからです。すべてのトランザクションに対して新しい鍵を使うことが、プライバシーの観点からは最も望ましいのですが、管理は非常に難しくなります。利便性とプライバシーのバランスをうまくとることは困難な課題ですが、逆に言えば、だからこそ優れたウォレット設計が重要になってきます。 ...
Become an O’Reilly member and get unlimited access to this title plus top books and audiobooks from O’Reilly and nearly 200 top publishers, thousands of courses curated by job role, 150+ live events each month,
and much more.
Read now
Unlock full access