まえがき
この本のまえがきでこんなことを言い出すとびっくりされるかもしれないが、実は私はアジャイル推進論者ではない。
ウェブサービスやスマートフォンアプリケーションなどに対して、小さい改善を繰り返すことで、使われるプロダクトを作り上げていく、いわゆるモダンなソフトウェア開発において、アジャイルが生み出した様々な手法を使わないということは昨今ではまずありえない。継続的なインテグレーションやテスト駆動開発など、ソフトウェア工学の観点からもその意義は確認されており、コンシューマー向けのプロダクトだけでなく、エンタープライズアプリケーションや業務システムにおいても幅広く活用できる。
その価値は認めつつも、なぜ私が積極的に推進できないのかというと、アジャイル手法導入が目的化してしまっている組織を多く見てきたからだ。「うちもアジャイルを入れました」とか、「自社の開発をてこ入れするために、アジャイルを学ばせています」などと言う企業の方々とお話させていただくこともある。しかしながら、その方々の作り出すプロダクトやシステムがあまり成功しているように思えない。
そのような事例を多く見るにつけ、私はまるでアンチアジャイルかのように、「アジャイルは銀の弾丸でも魔法の杖でもない」と注意喚起するようになった。何を言わんとしているかというと、アジャイル手法はあくまでも「型」であり、その「型」を学ぶだけでは、真の目的は達せられないということだ。
スポーツにはそれぞれ型(フォーム)がある。野球でもサッカーでもそうだ。日本古来の武道も同じだろう。球を投げたり、受け取ったり、蹴ったりする。どんなスポーツでも初学者はまず基本の型を習う。しかし、型を身につけるだけでは実践は不可能だ。型どおりに動くためには必要な筋肉を身につけねばならないし、どうしてそのような型になっているかの理解も必要だ。 ...
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