リーンエンタープライズ ―イノベーションを実現する創発的な組織づくり
by Jez Humble, Joanne Molesky, Barry O'Reilly, 角 征典, 笹井 崇司, Eric Ries
6章継続的改善をデプロイする
逆説的ですが、マネージャーが生産性にフォーカスすると、長期的改善はほとんどなされません。マネージャーが品質にフォーカスすると、生産性は継続的に改善されます。
ジョン・セドン
たいていの企業では、ソフトウェアシステムを構築・運用する人たち(しばしば「IT部門」と呼ばれます)と、ソフトウェアがすべきことを決めて投資判断を下す人たち(しばしば「ビジネス部門」と呼ばれます)を区別しています。これは、IT部門が製品やサービスを構築して顧客のために価値を生み出すのではなく、ビジネスの効率を高めるために必要なコストだと見なされていた時代の名残です。こうした名前と機能の分離は、多くの組織にはびこっています(これまでの関係性とマインドセットが残っているためです)。私たちは、最終的にこの分離をなくすことを目指しています。現在のハイパフォーマンス組織では、ソフトウェアベースの製品を設計・構築・運用する人たちは、ビジネスにとって必要不可欠な存在です。彼らは顧客成果に対する責務を与えられ、それを受け入れています。ところが、この状態になるまでが難しく、すぐに古いやり方に戻ってしまいます。
ソフトウェアを戦略的優位とする組織でハイパフォーマンスを達成できるかどうかは、IT部門の実行する能力だけでなく、IT部門と他の組織の連携にかかっています。連携に取り組むだけの価値はあります。MIT Sloan Management Reviewのレポート「Avoiding the Alignment Trap in Information Technology」によれば、452社のアンケート調査の結果、ハイパフォーマンス組織(全体の7%)は、平均よりもやや少ないIT投資でありながら、非常に高い収益成長率を達成していることがわかります ...