日本語版監訳者まえがき
UXは、User eXperience(利用者の体験)のことを示します。
哲学的な物言いになりますが、UX、つまり利用者の体験は、デザインしたり設計、開発したりできるものではありません。たいていの場合、利用者にこういった体験をしてほしい、利用者のことを第一に考えてこういった体験に導こうと考えてプロダクトやサービスを作ります。どんなに念入りに考えて作ったとしても、実際は考えていることの一部しか伝わらなかったり、予想外の使われ方をしたりすることもあります。利用者がどう使うのか、いったいどういう体験が得られるのか、どう感じるのかは、利用者に委ねられており、サービスの作り手がどうこうできるものではありません。ですから、UXデザインで思い描いた通りの使い方を利用者にしてもらえるかどうかはわからないのです。そして、そのわからない状況に挑むための指針がUXにまつわる戦略です。
本書『UX戦略』は、原題『UX Strategy』であり、strategyが意味するところはもちろん「戦略」であるとともに、目標達成のための戦術、計略、策略、計画、方策、方針、方法、手順、戦術論などを含みます。
原書第1版は2015年6月に、日本語翻訳版は2016年5月に、原書第2版は大幅に内容を追加、改訂され、2021年4月に出版されました。本書はその第2版の日本語翻訳版です。
最近特に「すべての事柄はUXに行き着く」と感じることが多くなりました。
人気の便利ツールも、皆が夢中になるゲームも、多くの人たちに使われているスマートフォンのアプリも、UXを前面に出していなくとも、UXがよく考えられ、UX戦略が練られていると感じられます。また、逆に使いづらい社内ツールや、業務向けのツール、巷に溢れる使い方がさまざまな事柄、スマートフォンを使った決済など、よく観察してみると、ありとあらゆるものにUXが関連しています。 ...
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