訳者あとがき
本書は、Addy Osmani氏によって執筆された“Leading Effective Engineering Teams”の日本語版です。本書を手に取られた方は、これからエンジニアリングチームのマネジメント職に就こうとしている方や、リーダーとしてチームを率いる役割を任されようとしている方ではないでしょうか。あるいはすでにリーダーとして活躍されている方で、自身のリーダーシップスキルをより向上させたいと考えている方かもしれません。どのような立場であれ、本書が提供する豊富で実践的なガイダンスは、エンジニアリングチームを効果的にマネジメントし、成功へと導くための一助となるはずです。
本書の内容は、GoogleにおいてChromeチームをリードしてきたOsmani氏の豊富な経験と、Googleをはじめとするさまざまな企業での調査データに基づいています。単なる理論にとどまらず、エビデンスに基づいた具体的なデータや成功事例を交えた実践的なアドバイスを説明しています。
本書はまず、効果的なソフトウェアエンジニアリングチームとはどのような条件を満たしているべきかについて、Googleなどで行われた調査結果に基づいて解説しています。また、「効果性(effectiveness)」、「効率性(efficiency)」、「生産性(productivity)」という3つの概念の違いについて丁寧に説明し、これらをどのように測定し評価すべきかについても触れています。特に「効果性」がソフトウェアエンジニアリングチームにおいて重要であるとし、その効果性を高めるための具体的な手法として、筆者が考案したモデルも紹介されています。
後半に進むと、より実践的な内容へと移行し、効果的なマネージャーの振る舞いについて深く掘り下げています。Googleの調査結果を引用しながら、優れたマネージャーがどのように振る舞い、どのようにチームをサポートしているのかを具体的に解説しています。その一方で、効果性を損なう「アンチパターン」についても触れられており、例えば、マイクロマネジメントやPR(プルリクエスト)の規則違反など、どのような振る舞いやプロセスがチームの成長を邪魔するのかを、その見つけ方や具体的な対策方法とともに紹介しています。 ...