訳者あとがき
本書は、Maurya, Ash. Running Lean: Iterate from Plan a to a Plan That Works, 3rd Edition. O'Reilly Media, Inc., 2022.の全訳です。「3rd Edition」とあるように、本書は『Running Lean』の第3版となります。
第1版は、2010年に自費出版として出版されました。これは、エリック・リースが提唱したリーンスタートアップの手法を書籍に適用する「実験」でした。つまり、重要な部分から構築(執筆)を開始して、顧客(読者)の反応を見ながら人数を増やしていき、適切なタイミングでリリース(出版)するというものでした。この実験は成功を収め、1年半で1万部を売り上げました。その様子は7章にも書かれています。
この成功が出版社の目にとまり、2012年には商業出版として第2版が出版されました。その出版社がオライリーであったことからもわかるように、第2版まではソフトウェアエンジニア出身の起業家を対象にしたものでした。ソフトウェア(製品)を自分で開発できたとしても、それがビジネスにならなければスタートアップとしては意味がありません。そこで、製品ではなくビジネスモデルに目を向けるための「リーンキャンバス」と、それを裏付けるための「顧客インタビュー(の台本)」が紹介されました。その結果、リーンキャンバスはスタートアップだけでなく、大企業や大学でも広く使用される人気のツールとなりました。また、顧客インタビューの台本は、内向的なソフトウェアエンジニアであってもすぐに実践できる有益なガイドとなりました。
しかし、これらはスタートアップの活動の一部にすぎません。ビジネスモデルを描き、顧客にインタビューして、製品を作ったあとはどうするのか。その疑問を解消するために書かれたのが、著者の2作目である『図解リーン・スタートアップ成長戦略』(日経BP)です。この本では、スタートアップの活動を「システム」として捉え、全体最適化を図るためのツールとして「顧客ファクトリー」と「トラクションロードマップ」が紹介されました。ゴールドラットの制約理論(TOC)を踏襲してロジックが積み重ねられており、方法論としての射程も広くなりました。 ...
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