訳者あとがき
2020年のことだ。侍が、大量のススキがなびく金色の野山を馬で駆けていく。刀の一閃で勝負の決着がつく。紅葉が散る中、紅蓮の焔が燃え盛る。時代劇映画の1シーンと言われても違和感のない数々の情景を、高精細なグラフィックスでリアルタイムに描き出す──そんなゲームプレイ予告動画を2018年に披露したビデオゲームが、満を持して発売されたのは、パンデミックが世界を震撼させている最中だった。
どこまでも日本的なそのゲームを最後までプレイし、極めてドラマティックな終局を迎えた後には、開発者たちの名前が挙がるクレジットが流れ出す。しかし、その中に、日本人らしき名前は見当たらないのだ。
時は流れ、2023年3月、サンフランシスコに私はいた。Game Developers Conference(GDC)2023に、4年ぶりに現地参加するためだ。GDC 2020は参加寸前に渡航取りやめを余儀なくされ、2022年から米国出張は再開していたもののサンフランシスコ訪問は4年ぶりで、感慨ひとしおだった。パンデミックを経て荒廃したと伝えられた街は、私の目からは、かつてと何ら変わりない活気を帯びてそこにあるように見えた。2019年までは毎年訪れる機会のあった街を離れていた期間が圧縮され、時が再び動き出したかのようだった。
久々の本格開催となったGDCは、世界各国から参加者を多数集めて以前にも増した盛り上がりを見せることで復活を印象付け、かつてのようにセッションを聴講しつつ新旧様々な人々と直接話すことができ、実り多いイベントになった。一方で、私個人にとってひときわ大きな意味を持つ出会いもあった。
GDC期間中は、サンフランシスコの中心を行き交う人口が膨れ上がる。目抜き通りであるマーケットストリートに面したコーヒーショップへ朝一番に向かうと、行列ができていた。用意に時間を要さないであろうハイビスカスジュースを注文し、待つ間に立って携帯電話をチェックしていると、待ち合わせた人物に声をかけられ、握手を交わす。 ...
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