日本語版まえがき
UXという言葉が日本でもよく聞かれるようになったのは2010年くらいからだろうか。UX自体は昔からある概念ではあるが、この数年で一気に認知が高まった背景にあるのはスマートフォンの爆発的な普及だろう。スマートフォンの普及でさまざまなシチュエーションでサービスを利用できるようになり、ユーザーのタッチポイントからサービス利用の一連の体験をデザインするのが重要という認識が広まった。しかし、単なるUXではなくビジネス戦略レベルから考えるUXの重要性が高まってきている。
2010年以降に日本でも流行りだしたUXという言葉はバズワード化し、その本質を理解されないまま大企業の内部でUXデザイン部やUXに関する社内横断組織が立ち上がったが、多くのケースでUX部署は企業内部で機能せずに中に浮く事態となることも最初は多かった。理由のひとつはUXとはデザイナーが考えるべきものであるという誤解があり、企業内で元々力のなかったデザイナーはリーダーシップを発揮できずにUX部署は絵に描いた餅となってしまったのだ。
私が当時から感じていた大きな違和感はここにある。UXとはデザイナーだけが考えるべきことではない。UXとは製品開発に関わる全職種のメンバーが考えるべき事で、こと今回の本のテーマとなったUX戦略を考えるべきなのは、これからスタートアップする起業家はもちろん企業のマネジメント陣である。UX戦略とは経営戦略の一部かつ、現代では最も重要な部類に入る戦略である。起業家や経営陣が主導で考え、コミットすべき事柄である。
UXに対する理解が日本よりも進んでいるアメリカでは昨今デザインエージェンシーの買収が相次いでいる。企業のUX戦略へのコミットが表れた象徴的な事例として上げられるのが2014年にUX専門のデザインエージェンシーであるAdaptive ...
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