まえがき
本書の目的
「人工生命」という言葉を聞いたことはありますか?
「人工知能」は知っているけれど、「人工生命」は初めて聞くという人は多いでしょう。
この言葉は、「Artificial Life」の訳語で、英語では「ALife(エーライフ)」と略されます。人工生命とはずばり、人間がコンピュータの力を借りながら生命の挙動をシミュレーションすることによって、「生命とは何か?」という根源的な問いを探究する分野を指します。
この本は、より多くの人にALifeに興味を持ってもらうと同時に、自身のコンピュータ上でALifeのプログラムを動かし、自身の関心にそって新しいALifeの使い方を学んでもらうために書かれています。
大きな前提として、今日、生命についてテクノロジーを使って考えることには、どのような意味があるのでしょうか?
実は、コンピュータの歴史は、生命を「計算」しようとした科学者たちの軌跡でもあります。コンピュータの数学的原理を打ち立てた数学者のアラン・チューリングは、生物の持つ模様を数式化した「モルフォジェネシス」という論文を1952年に発表しましたし、モダンなコンピュータの基本構造を作り上げたジョン・フォン・ノイマンは、「自己増殖」という生命的な挙動を数学的に定義し、1966年に「自己増殖オートマトン」の研究としてまとめました(本書では、この両者のモデルに基づいた実際のプログラムにも触れて学んでいきます)。
このように、コンピュータによってもたらされた計算能力によって、それまでは複雑すぎて人間の手では太刀打ちできなかった生命の領域に切り込もうという流れが生まれたのです。現代の高度化した科学でも、まだ「生命とは何か?」を完全に定義できないでいますし、身体に付随する人間の心や意識の研究も、途上の段階にあります。 ...
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