6章個体の動きが進化する
ALifeの研究では、生物の進化がどのように生じたか、人工的にどうやって進化を作り出すかということに注目しています。進化の研究が博物学者や生物学者から、分子生物学者、化学者に引き継がれ、いよいよ物理学者やコンピュータ科学者に任せられるようになったことで、その様相は加速しています。試験管の中で細胞内部の化学反応を再現し、それを用いる実験進化の研究は、ALifeがシミュレーションやロボティクスから、生命そのものの領域へと入っていく時代の幕開けを示しています。
この章では、ALifeが対象としてきた進化の議論を振り返った後に、ジョン・ホランドの遺伝的アルゴリズムを取り入れ、ニューラルネットワークを持つエージェントの挙動を観察することで進化、さらには集団の進化の理解を深めていきます。
6.1 進化と自己複製
生命は、進化するシステムです。この節では自然界にみられる進化現象をレビューしつつ、それをいかにコンピュータの中の人工世界に移植するかについて見ていくことにしましょう。
まず前提として、進化するには進化する主体、自己複製する集団を仮定する必要があります。なぜなら、進化は個体が変異しつつも複製できて、それが集団内へと広がっていくことで成立するからです。例えば、ある大腸菌が自己複製をして、少しだけ違う形質を獲得した大腸菌が出現したとします。その形質に生存に有利な特徴が何かあったとすると、その形質は集団内に広がります。こうした新しい形質の出現と拡散を助けるものは何なのでしょうか?
自己複製するものをはじめて理論的に存在証明したのが、フォン・ノイマンです。自己複製は自分で自分を作ることであり、細胞をはじめ、一般的に生物個体は自己複製しているように見えます。しかし、理論的に自己複製が可能かどうか、それを証明するのは難しいことです。そこでフォン・ノイマンは、自己複製する本体をテープにエンコードして、テープからデコードして自己複製するという方法を行い、セルラー・オートマトン上に実装することに成功したのです。 ...
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