3章個と自己複製
個の創発や自己複製は、ALifeの核心的な問題のひとつです。そもそも個はどう定義されるのか、自己複製は可能なのか、その定義やメカニズムが解明されつつあります。
「個」や「自己」とはいったい何かということが、ゆらいでいるのが現代です。例えば私たちは、インターネットやスマートフォンなしでは生活できないところまできています。インターネットによって拡張された自己について、遺伝子が規定する自己とは質的に異なる議論をすることが求められています。
この章では、自己複製プロセス、あるいは自己複製アルゴリズムを議論するために、これまでALifeの分野で扱ってきたモデルを組み立てしながら、考えていきます。
3.1 個の創発
「個」を規定するプロセスは何か、ということを考えてみましょう。
化学的に見て、例えば細胞を外部環境と隔てる膜を考えます。それは物理的には、内と外を隔てながらも透過性を持つ動的なインターフェースです。完全に内と外を隔ててしまっては、反応が死んでしまうので、そのインターフェースを通してさまざまな物質が流れ込み、流れ出します。
完全に環境から孤立して、安定しきってしまっていると生命的になりません。石ころは安定したシステムですが、生命ではないのは、そこにインターフェースとしての膜がないからです。反対にどんどん変わっていってしまうシステムは不安定すぎて、内外の境が崩壊します。そこには個という単位は生まれません。
2章で見たウルフラムのクラス分類でいうと、石はクラス1、変化し続けるパターンはクラス3、安定と不安定の間にあるのはクラス4に分類されるシステムです。
秩序とカオスの境界を行き来するような、開きつつ閉じる、ということが必要なわけです。カオスほど開かないが、周期的であるほど閉じていない―それが「開きつつ、閉じる」ということです。 ...
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