8章意識の未来
意識とは何かという問題は、生命科学によってもいまだ解明されていない難しい問題であり、この謎が解けることがあるとすれば、それは人類だけではなく生命全体の理解に最大級の発展をもたらすでしょう。その意味では、これはALife研究にとっても究極的な問いであると言えます。
この章では、人間の自由意志に疑義を突きつけたリベットの有名な実験を振り返りながら、意識というシステムの進化上の意味を考察し、意識を持つエージェントやロボットを作るという命題に構成論的にアプローチしてきたALifeの研究を紹介、意識の本質に迫っていきます。
8.1 意識のボトルネック
ALifeにとっての究極の問いは、「ALifeエージェントが固有の時間と空間を生成し、人工的な意識を持てるのか」、ひいては「ALifeは自由意志を持ちうるか」、といったものになるでしょう。これは、ALifeを作ろうとする研究が進む中、必ずどこかで突き当たる問題です。
脳神経生理学者のベンジャミン・リベットはALifeの研究者ではないのですが、意識や自由意志に関する、核心的な2つの発見を報告しています[62]。それは、「意識のボトルネック」とでも言うべき問題です。まず、そのリベットの発見した内的時間の出現、デジャヴュ(既視感;déjà-vu)、時間・記憶といった問題に触れてみます。
人が意識して何かをやろうと思った、その0.5秒前にはすでに身体的にその準備ができている、それがリベットの最初の発見です。例えば、何かを手でつかもうと思った0.5秒前には、すでに手を動かすために必要な脳の活動がはじまっている、と言います。これはむしろ、脳の「計算」の効率をよくしているとも言えます。意識にいちいち上げることは、すばやく何かをしようとする時にボトルネックとなるからです。この準備段階の神経活動を、「レディネス・ポテンシャル(readiness ...
Become an O’Reilly member and get unlimited access to this title plus top books and audiobooks from O’Reilly and nearly 200 top publishers, thousands of courses curated by job role, 150+ live events each month,
and much more.
Read now
Unlock full access