7章ダンスとしての相互作用
模倣し合う、競合し合う、協力し合う、遊ぶ―生命個体同士は多様な相互作用、つまり関係性のパターンを見せます。その関係性は、相互の内部状態の推移によってダイナミックに影響を受けるものでもあります。
私たちはどのように「相手」の存在を把握し、自らの行動にフィードバックしているのでしょうか?
この章では、「模倣」や「予測」といったキーワードを紐解きながら、他者の実在感の認知から「間主観性」が立ち上がるという議論を踏まえて、6章で使ったエージェント同士を相互作用させるシミュレーションを走らせることで、相互作用と生命の関係性を探っていきます。
7.1 内部状態とアトラクター
2章では、簡単なルールの相互作用が作り出す複雑な生命的なパターンを見ました。そして、3章では、相互作用の中で個が生まれ、それを保ちつづけるモデルを見ました。
しかし、これらのモデルに足りないのが「内部状態」という概念です。例えばヤドカリにとっては、同じイソギンチャクが殻の装飾や食料になったり、または遊び道具になったりします。それは、ヤドカリの内部状態に依存するのです。
ここまでのモデルは、基本的には内部状態を持たないエージェントでした。特にブルックスの「サブサンプション・アーキテクチャ」は、単純な反射行動の積み重ねで作られます。文脈が同じで、エージェントに内部状態がなければ、どんな場合にでも同じ結果になります。生物は、その時の内部の主観的な状態、あるいは記憶のあり方などによって、振る舞いが変わるわけです。
力学系(決定論的な規則に従って時間発展により状態が変化するシステム)としてのカオス運動や非常に複雑な環境では、内部状態がなくても、生命現象的な「決まらなさ」が生まれます。
一方で、「生命的な意味が付与できる決まらなさ」は、内部状態のダイナミクスが大事になると考えられます。内部状態が、環境のもとで時間的にどのように変遷していくのか、その規則や方程式が作り出す「アトラクター(attractor)」(ある力学系において時間を経た後に定期的に観察される安定状態)の種類や構造は、事前にはわからない場合が多いのです。 ...
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