訳者あとがき
本書は、Kent Beck著『Tidy First? A Personal Exercise in Empirical Software Design』(978-1098151249、O'Reilly Media、2023年)の全訳です。原著の誤記や誤植などについては確認して一部修正しています。
ケント・ベックは、現代のソフトウェア開発に大きな影響を与えた1人です。功績は多数ありますが、代表的なものとして、エクストリームプログラミング(XP)の考案、JUnitの開発、アジャイルマニフェストへの署名などが挙げられます。また、1996年から2007年にかけて多数の著書を上梓しました。
そして2023年に16年ぶりに発表されたのが本書です。2021年の1月に、Webの執筆プラットフォームであるSubstackで「Software design is an exercise in human relationships(ソフトウェア設計は人間関係のエクササイズだ)」という記事(https://tidyfirst.substack.com/p/coming-soon)を投稿したところから始まっています。以降、小さな記事を多いときには毎日のように投稿し、購読者と議論したり、フィードバックを得たりしながら進め、それらの記事をまとめる形でできたのが本書です。アジャイルの原則は、動作するソフトウェアを早期から頻繁に提供してフィードバックを得ることで、顧客満足を向上し、リスクを低減することですが、本書はその原則を適用して作られたと言ってよいでしょう。
「まえがき」にあるとおり、本書はソフトウェアの設計をテーマとする全3冊のシリーズの最初の書籍です。「人間関係」のなかでも、まずは「自分自身」との関係に主眼を置いて、1人でできる範囲のソフトウェア設計について説明しています。つまり、読者は、本書を読みながら、すぐに自分が取り組むコードを改善したり、自分の仕事のやり方を改善したりできるようになります。もちろん個人ができる範囲には限りがありますが、小さな取り組みを積み重ねることなくして、大きな結果は得られません。個人が自分の仕事の質を改善することなしに、別の力によって質が改善することもありません。ぜひ、本書の内容にすぐに取り組んでみてください。 ...
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