ゼロトラストネットワーク 第2版 ―境界防御の限界を超えるためのセキュアなシステム設計
by Razi Rais, Christina Morillo, Evan Gilman, Doug Barth, 鈴木 研吾
1章
ゼロトラストの基本
ネットワーク上の監視が広く行われるようになった現代、信頼できる対象が見当たらないだけでなく、そもそも「信頼」の定義自体が困難になっています。盗聴からインターネットトラフィックが保護されていないと自信を持って言えるでしょうか?光ファイバーのリース事業者は信頼のおける事業者でしょうか?昨日データセンターで配線作業をしていた技術者はどうでしょうか?
エドワード・スノーデンやマーク・クラインのような内部告発者により、政府の支援を受けた諜報組織が大手組織のデータセンターに侵入していたことが明らかになり、世界は衝撃を受けました。しかし、なぜそこまでの衝撃だったのでしょうか?あなたに諜報組織の立場と能力があれば、同じことをしたのではないでしょうか?特にそこのトラフィックが暗号化されていないことを知っていれば、なおさらです。
データセンター内のシステムとトラフィックが十分に保護され信頼できるという前提は誤りです。現代のネットワークとユースケース*1は、かつて境界防御が合理的だった時代のものとギャップがあります。その結果、自由に移動できる「安全な」インフラストラクチャーは、単一のホストまたは経路が侵害された際に脆弱になり得ます。
*1 訳注:ここで想定されているのは、エンタープライズ上でのネットワークです。
サイバー攻撃を武器に原子力発電所や送電網といった重要インフラを混乱させるといった懸念は考えすぎと思うかもしれません。しかし、アメリカのコロニアルパイプライン*2やインドのクダンクラム原子力発電所*3に対するサイバー攻撃は、懸念が現実のものであることを示しています。では、この2つの攻撃に共通していたことは何でしょうか?
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