ゼロトラストネットワーク 第2版 ―境界防御の限界を超えるためのセキュアなシステム設計
by Razi Rais, Christina Morillo, Evan Gilman, Doug Barth, 鈴木 研吾
訳者あとがき
ゼロトラストの考え方は、もはや一部の理論やスローガンではなく、日本社会全体で実装段階に入っています。例えばIPA(独立行政法人情報処理推進機構)は、自組織にゼロトラストを実装するためのガイドを公開し、デジタル庁も政府情報システムにおけるゼロトラストアーキテクチャ適用方針を示すなど、日本での社会実装が着実に進んでいます。
一方、アプリケーション開発の現場でも「何を信頼するか」を見直す必要性が高まっています。近年、CI/CDパイプライン自体が攻撃対象となり、ソフトウェアサプライチェーンを狙った事例が顕在化しました。代表的なのはSolarWinds社への攻撃で、正規のソフトウェアアップデートにマルウェアが混入し、多数の企業・団体に影響が及びました。この事例から「アプリケーションの信頼性」、すなわちソフトウェアやその開発プロセスをいかに信頼できるものにするかが重要視されるようになっています。開発段階からのセキュリティ実装やSBOMによるソフトウェア構成の透明化などが求められています。
さらに現在進行中の第4次AIブームも、私たちの「信頼」の捉え方に新たな問いを投げかけています。生成AIに代表されるAI技術の普及で、クライアントデバイスやエッジ側で重要な処理が行われるケースが増え、従来のクラウド中心のアーキテクチャとは異なる状況が生じています。このため、クライアント側の信頼性設計が再び重要になっています。デバイスのセキュリティ、データ整合性、エッジとクラウド間の認証・認可強化など、エッジ環境でもゼロトラスト適用が必要になっています。
こうした技術動向や脅威環境の変化を踏まえ、『ゼロトラストネットワーク第2版』では内容を大きくアップデートしました。
●信頼管理アプローチの進化:ユーザーやデバイスの状況に応じて動的に信頼を評価する各種「トラストスコア」の管理方法が追加されている。 ...
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