ゼロトラストネットワーク 第2版 ―境界防御の限界を超えるためのセキュアなシステム設計
by Razi Rais, Christina Morillo, Evan Gilman, Doug Barth, 鈴木 研吾
12章
課題と未来
最終章ではゼロトラストの導入に際して直面する一般的な課題や、量子コンピューティング、AI、プライバシー強化技術といった新たな技術開発がもたらす影響について学びます。本章の目的は、ベンダーに依存しない形でゼロトラストイニシアチブに関連する技術的および機能的な課題の全体像を提供するとともに、ゼロトラストおよび組織のより広範なサイバーセキュリティ活動に最終的に影響を与えるであろう新興技術について論じることです。
12.1 課題
このセクションではゼロトラストイニシアチブの実装において一般的な課題について説明し、それらに対処するための推奨事項をいくつか提供します。この内容を掘り下げていくと課題には技術的要因だけでなく、文化やプロセスレベルの改善を必要とする機能的な問題も含まれていることが明らかになります。
12.1.1 マインドセットのシフト
ゼロトラストイニシアチブを実装するには、セキュリティの考え方を根本的に変える必要があります。従来の境界ベースのセキュリティから「常に侵害を想定する」というマインドセットへの移行が必要です。しかし、10年以上にわたるレガシーITアーキテクチャと実践経験を持つ大規模な組織では、ゼロトラスト原則の実装は課題となります。
ほとんどの組織にとって、ゼロトラストイニシアチブは新しい取り組みであり、経営陣による同意とサポートが必要です。ゼロトラストイニシアチブ実施にあたって効果的に課題に対処するために、組織内のすべての主要なステークホルダーは自身の主要目標を見直し、チームまたはグループの主要成果(OKR:Objectives and Key Results)にゼロトラスト関連の活動を組み込む必要があります。
さらに、組織内でゼロトラストイニシアチブを実装する際には、継続的なアプローチを用いることをお勧めします。主要なステークホルダー間でゼロトラストアプローチの採用がセキュリティ態勢の強化につながるとの合意があっても、実装対象として別のステークホルダーを優先する場合があります。例えば、変化や新しいアイデアに対する受容性が高いビジネスや組織内のグループなどです。11章で説明した成熟度モデルを参照して、さまざまなゼロトラスト実装の手法についてより深く理解することをお勧めします。 ...
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