ゼロトラストネットワーク 第2版 ―境界防御の限界を超えるためのセキュアなシステム設計
by Razi Rais, Christina Morillo, Evan Gilman, Doug Barth, 鈴木 研吾
11章
ゼロトラストのアーキテクチャ標準、フレームワーク、ガイドライン
「ゼロトラスト」という言葉は、もともとStephen Paul Marshが1994年4月のコンピューターセキュリティに関する博士論文で初めて使用しました*1。彼はその論文でトラストを数学的に定義し、トラストの概念は道徳性や倫理観といったさまざまな人間の特性を超越するものだと主張しました。しかし、今日我々が知るゼロトラストセキュリティパラダイムの文脈でこの言葉が定義され、明確に表現されたのは、2010年11月のForresterレポート*2での発表です。これ以降、デジタル世界は大きく変化しました。クラウドコンピューティングの広範な普及、COVID-19パンデミック中およびその後のリモートワークの急増による大規模なデジタル化への移行、そして日常生活におけるモバイル端末とソーシャルメディアの遍在性が代表的です。また、人工知能の提供は遠い未来から現実のものとなり、企業と個人の両方に大きな変革をもたらしています。
*1 https://dspace.stir.ac.uk/handle/1893/2010
*2 https://www.forrester.com/report/No-More-Chewy-Centers-The-Zero-Trust-Model-Of-Information-Security/RES56682
技術革新の結果として、通信の改善やリソースへの迅速なアクセスなどの恩恵を我々は受けていますが、同時に悪意のある攻撃者が悪用できる攻撃対象領域を拡大するという意図せぬセキュリティ上の結果も招いています。これはFBIのインターネット犯罪レポート*3からも明らかで、2022年にはセキュリティやデータ関連の犯罪によって、アメリカだけでも100億ドルを超える損失が発生したことが示されています。その結果、組織はセキュリティ態勢を強化するために、境界型セキュリティなどの従来のセキュリティモデルから離れ、ゼロトラストに基づくセキュリティの理念と原則を採用する必要に迫られています。著名な調査・助言会社であるGartnerは、2026年までに大企業の10%が成熟し、測定可能なゼロトラストプログラムを持つようになると予測 ...
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