ゼロトラストネットワーク 第2版 ―境界防御の限界を超えるためのセキュアなシステム設計
by Razi Rais, Christina Morillo, Evan Gilman, Doug Barth, 鈴木 研吾
2章
信頼の管理
信頼*1の管理は、おそらくゼロトラストネットワークにおける最も重要なコンポーネントです。皆さんも日々の活動を通じ、何らかの形で「Trust」に触れているでしょう。例えば路上の見知らぬ人より、家族を信頼するなどです。特に、見知らぬ人が威嚇的で危険に見える場合はなおさらです。なぜでしょうか?
*1 初版では原文の「Trust」を場面に応じて「信頼」および「信用」と訳していました。しかしここ数年、日本語でも「トラスト」という用語がIPAやデジタル庁などにより「信頼」の単語を使い解説され、普及し始めています。そのため、第2版では特に文脈的な齟齬がない限り、「信頼」を使用しています。
- https://trustedweb.go.jp/documents/
- https://www.ipa.go.jp/digital/architecture/reports/trust-basics.html
まず、あなたは実際に家族を知っています。彼らの顔つき、住んでいる場所を知っています。多くの場合、短い期間だけの関係ではなく、長い人生を通じて知り合ってきた存在でしょう。彼らは「見知らぬ人」ではなく、重要な事柄について判断や行動をする際に、過去の行動や長期間の付き合いによって「信頼」が十分に蓄積されているので、より「信頼」しやすい存在となるでしょう。
一方、見知らぬ人はそうではありません。その人の顔など、基本的なことがらはわかるかもしれませんが、その人が住んでいる場所や経歴まではすぐにわかりませんし、本当にそうなのか判断することも難しいです。たとえ相手が無害そうに見えても、大切な用件を任せるのはためらわれるでしょう。例えばトイレに行くあいだ荷物を見ていてもらう程度なら頼めるかもしれませんが、自分の代わりにATMに行ってもらうことは絶対に考えないはずです。 ...
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