Googleのソフトウェアエンジニアリング ―持続可能なプログラミングを支える技術、文化、プロセス
by Titus Winters, Tom Manshreck, Hyrum Wright, 竹辺 靖昭, 久富木 隆一
4章公正のためのエンジニアリング
Demma Rodriguez 著
Riona MacNamara 編
従前の各章で探求してきたのは、以下2つの対比だった。1つは、目の前の問題に対処するコード生産活動としての、プログラミングである。もう1つは、コード、ツール、ポリシー、プロセスを、何十年あるいは数世代にまでわたることのある動的かつ曖昧な問題に対して、プログラミングの場合より広く適用する活動としての、ソフトウェアエンジニアリングだ。本章では、幅広いユーザー基盤を対象に製品を設計する際にエンジニアが負う、特有の責務について論ずることになるだろう。その上で、組織がダイバーシティを受容することで、どのようにして全ての人のために機能するシステムを設計できるようになるか、そして、ユーザーに対して永続的な悪影響を与えないようになるかを評価していく。
ソフトウェアエンジニアリングの分野自体新しいが、ましてやソフトウェアエンジニアリングが低代表(underrepresented)†1の人々や多様な各社会に与える影響の理解の点では、我々はいまだに初心者である。我々は本章を、答えを全て知っているから書いたわけではない。我々は答えを知らないのだ。事実、ユーザー全員を尊重し自己実現力を与える製品設計方法の理解については、いまだGoogleは学びの途上にある。我々は、ユーザーのうち誰よりも弱い者たちを守れなかったという失敗の数々が公になることを許してきた。それ故に、我々は本章を書いている。製品の公正さを推し進めていく道のりは、自身の失敗を評価検討し成長を促すところがその始点となるからだ。
†1 訳注:representには何かを「代表する」「象徴する」という意味に加えて、「ある集団に(しばしば少数派の)部分的集団の代表者が参画し発言する権利能力がある」という意味があり、本章の「代表性(representation)」は主にこの権利能力を指す。低代表(underrepresented)は、代表が不足している状態。具体的には、女性や特定人種/民族などの部分的集団に関して、権力を持ちやすい集団(経営者や政治家などのリーダーシップに属する権力を持つ集団や、技術者や研究者など高度な専門教育機会を要する集団)内で占める(=属する部分的集団を代表する)割合が、社会全体で占める割合より歴史的に有意に小さくなってきている状態。例えば日本では、国民のほぼ半数は女性だが、国民を代表する国会の衆議院議員のうち女性は9.9%であり、上場企業役員のうち女性は5.2%にすぎない(男女共同参画白書、内閣府男女共同参画局、2020年)。 ...
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