Googleのソフトウェアエンジニアリング ―持続可能なプログラミングを支える技術、文化、プロセス
by Titus Winters, Tom Manshreck, Hyrum Wright, 竹辺 靖昭, 久富木 隆一
24章継続的デリバリー
Radha Narayan, Bobbi Jones, Sheri Shipe, David Owens 著
Lisa Carey 編
技術の状況が移り変わる速さと予測不可能性とを前提とすると、あらゆる製品にとって、競争的優位とは、迅速に市場への投入ができる能力の中に存在するものである。市場内の他のプレイヤーとの競争、製品とサービスの品質の維持、新しい規制への適応等を行うことができるという、製品が持つ能力を左右する決定的に重要な要因は、組織の速度である。組織の速度は、デプロイまでの時間により律速される。デプロイは、最初の製品ローンチ時に一度だけ起こるわけではない。教育者の間では、どんな授業計画も学生たちとの初めての接触を切り抜けて生き残ることはできない†1という格言がある。ほぼ同様に、どんなソフトウェアもその初めてのローンチ時点で完璧なことはなく、唯一確実なのはそのソフトウェアを更新しなければならないだろうということだけだ。それも迅速に。
†1 訳注:ドイツ帝国の軍人、Helmuth Karl Bernhard von Moltke(1800-1891)の軍事戦略理論における臨機応変を説く文言「どんな計画も敵との接触を切り抜けて生き残ることはできない」をもじったもの。
ソフトウェア製品の長期的なライフサイクルの中で必要となるのは、新しいアイデアの高速な探究、状況の変化やユーザーの問題への高速な応答、スケールした状態で開発者が速度を出すことの実現である。Eric Raymond†2の『The Cathedral and the Bazaar†3』からEric Reis†4の『The Lean Startup†5』に至るまで、あらゆる組織の長期的成功への鍵は常に、アイデアを実行に移しその成果をユーザーの手にできるだけ迅速に届けられるとともに、ユーザーのフィードバックに迅速に反応できるという能力を、その組織が持っているかという点にあった。Martin ...