Googleのソフトウェアエンジニアリング ―持続可能なプログラミングを支える技術、文化、プロセス
by Titus Winters, Tom Manshreck, Hyrum Wright, 竹辺 靖昭, 久富木 隆一
訳者あとがき
本書は、『Software Engineering at Google: Lessons Learned from Programming Over Time』(O'Reilly Media/2020年3月)の全訳です。
20世紀末、商業インターネットの黎明期は様々な検索エンジンが群雄割拠する戦国時代でした。大学生の私は、検索エンジンを使い分け、あるいは複数検索エンジンから結果を横断的に得るメタ検索エンジンを使い、ドットコムバブル時代のネットサーフィンを楽しんでいました。
しかし1998年、Google検索が彗星のように登場したのです。そのミニマルなデザインからは予想もつかない革新的な高い性能が世界中で人気を博し、私にとっても常用のツールとなるまで時間を要しませんでした。他の海外製検索エンジンは日本語コンテンツへの対応が心許なかったところ、Google検索は十分対応していたのも印象的でした。以来今日に至るまで、私が使うPCのウェブブラウザーのホーム画面は、Google検索のままです。
その後、2000年にGoogle検索日本語版とAdWords、2003年にAdSenseがローンチし、Googleのビジネスの中核を成す広告事業が確立します。以後Googleは、Gmail(2004年)、Googleマップ(2005年)、YouTube(2006年買収)、Chrome(2008年)、Android(2005年買収、2008年ローンチ)と、今日誰もが知る社会インフラとも言うべき数々のサービスを開発運用してきています。
目覚ましい成果を挙げる世界的企業の内幕に関心が集まるのは必至です。その情報に私が初めて触れたのは2010年、ソフトウェアエンジニアとして勤務していたスタートアップ企業が秋葉原で共催した、当時グーグラーだった川島優志氏 ...