訳者あとがき
コントローラビリティを得るためのオブザーバビリティ
「オブザーバビリティ(可観測性)」は、DevOpsからSREへのムーブメント、もしくはKubernetesなどの技術スタック、マイクロサービスアーキテクチャなどの設計プラクティスの中でほぼ登場する単語です。ちょうど本書が出版される直前、「マイクロサービスアーキテクチャ 第2版」の日本語版が出版され、その中で第10章として「監視から可観測性へ」という章が追加されています。如何にこの分野が注目されているか、そして進化が早いかが想像できるのではないかと思います。
本書が出版される以前は、オブザーバビリティとは何か、どのように役立つものかをニュートラルな視点からまとめた日本語の書籍は登場していませんでした。また、英語でObservabilityをタイトルとした書籍はいくつか発表されていますが、“Distributed Systems Observability”、“Infrastructure and Ops Superstream: Observability”など、特定の状況を想定したオブザーバビリティの解説書籍が多く、本書のような「オブザーバビリティとは何か」について包括的に解説している書籍は他にありません。
日本においては、しばしば「Observability」と英単語で書かれます。これはおそらく、高い関心と期待を集めている一方で、どう扱って良いのかよくわからないことを示しているかもしれません。その状況で、正面からオブザーバビリティについて解説する本書は、エンジニアリングに関わる皆さまにとって、必ず役に立つものだと確信しています。
本書の1章でも触れられているとおり、オブザーバビリティ(可観測性)という概念は、コントローラビリティ(可制御性)と切り離して考えることはできません。それでは、ソフトウェア・システムにおいて、コントローラビリティとは何を指すのでしょうか。たとえば、次のようなものが考えられるでしょう。 ...