第3版監訳者まえがき
『荘子』外篇の天運篇は、孔子と老子の対話からなる。孔子は老子に愚痴をこぼす。六経を修め、それを政治に生かそうと君主に聖王の道を説くが、誰も耳を貸さない。人を説得することや道を説明することは難しい、と。これに対して老子は次のように答えた。
幸いなり、子の治世の君に遇わざるや。夫れ六経は、先王の陳迹なり。豈に其れ迹する所以ならんや。今子の言う所も、猶お迹なり。夫れ迹は履の出だす所にして、迹は豈に履ならんや。
—— 『荘子』外篇 天運篇 第七章池田知久 訳注『荘子 上 全訳注』より
老子曰く、六経は古の聖王たちが残した足跡に過ぎず、その足跡を生み出した聖王たちの生き方や、彼らが抱いていた道そのものとは違う。また、孔子が口から発する言葉も足跡に過ぎない。そもそも足跡は靴がつけるものであり、靴そのものではない、と。
ひるがえって現代を見ると、生成AIを使えば、文字どおりコードや文章、画像や音声、果ては動画まで生成できる。しかし、上記の老子の言葉を借りるなら、生成AIは、これまで人類が作ってきたコードや文章が生み出した足跡に過ぎない。ならば、本書はコードを生み出す靴とは何かを問うものであり、それを会得するためのヒントである。
本書について
全体として全3部構成であり、第Ⅰ部はPythonの文法や基本的なデータ構造の説明である。第Ⅱ部は開発に必要なツール群に焦点を当てている。第Ⅲ部は実践である。昨今、Pythonの入門書は雨後の筍のごとく多数出版されているが、本書は単なる入門書ではなく、Pythonを使って何ができるかまでカバーする稀有な本である。
第2版と比較すると、第2版19章「パイソニスタになろう」で扱われていた開発環境、テスト、デバッグに関する内容が第3版では第Ⅱ部(13~16章)として独立し、大幅に拡張されている。第2版12章「データの自在な操作」で扱われていた「バイナリデータ」は単独の章が与えられた。また、最近のトレンドを反映した章として26章「AI」や27章「パフォーマンス」が追加された。一方、第2版から統合されたり削除された章も存在するが、Pythonを使って仕事をするという観点では内容が引き締まったとも言える。 ...
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