第7章ネットワーク層プロトコル
遅延に関するトラブルをトラブルシューティングするとき、うまく機能していないアプリケーションを確認するとき、あるいは異常なトラフィックを発見するためにセキュリティ上の脅威に注力するときなど、まずは正常時のトラフィックの理解が不可欠です。ここからの数章では、正常時のネットワークトラフィックについて、OSI参照モデルの下層から上層までパケットレベルで見ていきます。それぞれのプロトコルのセクションでは関連するキャプチャファイルを最低ひとつは紹介しているので、ダウンロードして直接いじってみることができます。
本章では特に、ARP、IPv4、IPv6、ICMP、ICMPv6といった、ネットワーク通信を担うネットワーク層プロトコルに焦点を当てています。
ネットワーク層プロトコルについて説明したここからの3章は、間違いなく本書においてもっとも重要な章です。ここを読み飛ばすのは、オーブンを予熱せずに感謝祭のディナーを作ろうとするようなものです。各プロトコルの機能について、すでにきちんと理解している場合でも、最低限さっと目を通して、それぞれのパケットの構造を見直しておきましょう。
7.1 ARP(Address Resolution Protocol)
ネットワーク通信では、論理アドレスおよび物理アドレスの両方が使われます。論理アドレスを用いることで、ネットワーク越しに直接接続されていない機器間での通信が可能になります。物理アドレスは、単一のネットワークセグメント上でスイッチを通じて直接つながっている機器間の通信に使われます。たいていの場合、通信を行うには、この両方のアドレスが連携して動作する必要があります。
ネットワーク上のある機器と通信したいとしましょう。その機器はサーバかもしれませんし、ファイルを共有したいワークステーションかもしれません。通信を始めようとしているアプリケーションは、すでにリモートのホストのIPアドレスを(「第9章「知っておきたい上位層プロトコル」」で説明するDNSによって)認識しており、送信したいパケットの第3層から第7層を構築するのに必要な情報をすべて持っているものとします。ここでさらに必要な情報は、宛先ホストのMACアドレス(物理アドレス)を含む、第2層(データリンク層)のデータだけです。 ...
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