6章OSS開発のリーダーシップ
まつもと ゆきひろ
1993年に私が個人的な趣味として開発を開始したプログラミング言語Rubyは、当時からはまったく想像もできないほど普及し、今やみんなが知っている(そして使っている)世界的Webサービスの実装に用いられたり、世界のどこかで毎週のようにカンファレンスが開かれるほどの人気ぶりです。オープンソースソフトウェアであるRubyのユーザー数を正確にカウントする方法はありませんが、世界で100万人を越えるユーザーがいるのではないかと概算されています。
このRubyの人気に関しては、しばしば「開発当初の時点で今の普及状態を予想できましたか」と質問されましたが、まったく予想できるはずもありません。むしろ、完全に個人の趣味による活動だったので、たとえるならば、爪楊枝を積み上げて姫路城の模型を作る趣味人と同じように、自分は楽しんでいるけれども、世間からは変人扱いされるのがオチだろうと思っていて、このように周囲から評価されるとは考えていませんでした。
しばらく開発を続けた結果、実用できるくらいの完成度に近づいたので、これまでお世話になったフリーソフトウェアコミュニティへの感謝の気持ちを込めて、ほんの軽い気持ちで「おすそわけ」としてインターネットに公開したら、ジワジワと人気が出て、最後にはこの有様です。「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったものです。
リーダーなんてガラじゃない
ソフトウェア開発者の中には、人とコミュニケーションしたり、リーダーとしてチームを導くことにはあまり関心がなく、もっぱら新しい言語やテクノロジーを学んだり、作り出したりすることの方へ興味が向く「人種」がしばしば観測されます。ご多分に漏れず私もそういうタイプで、だからこそ自分の言語をゼロからデザインする活動に没頭したわけです。あくまで趣味として。 ...
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