8章リーダーシップは誰のものか
たなべ すなお
静かなリーダーシップ
忘れられない言葉があります。当時、私は保険会社のエンジニアをしていました。そこは技術への興味が比較的薄い職場で、私は歴年の課題の多いプログラムと開発環境を抱え、どのように現場を改善していくかに四苦八苦していました。4年半ほどその職場で勤め、辞めるというときに上司から言われたのが「君を見ていて静かなリーダーシップがあるというのを学んだ」という一言です。
正直意外な一言でした。その職場では私は課の中で最年少でほとんどの人は10歳近く年長だったため、自分の中の課題意識から現場をよくしようと試行錯誤していたものの、他の人へ働きかけようという意識はさほどありませんでした。私は性格やコミュニケーションの表現上、相手に熱意が伝わりやすいタイプではないし、実際同じチームの人に理屈で話していて思いが伝わらないと面と向かって言われたこともあります。どちらかというと一定の思いが自分にあったとしても相手に響いていないなと感じたら自分でやるなり他の協力を仰ぐなり手段を変えて物事をクリアしていくようなタイプです。そういう自分にもリーダーシップと評価されるようなやり方があるというのはそう言葉として伝えられて初めて意識をすることができ、その後の自分の指針になっています。
そのときに「静かなリーダーシップ」と表現されたのは、次のような点です。「『こうあるべきだ』というのを宣言して、周りへ説明をしながらそこに向けて淡々と地道に進み続けていく。結果的に時間が経つと最初に宣言した方向へ少しずつ状況と周りが変化していっている。熱く語りかけるのではないが、自分が推進力として進めていくことで周りが巻き込まれて変化していく」
若かった自分にとってはただ試行錯誤の中で働いていただけでしたが、そのプロセスに静かなリーダーシップという名前をつけてもらったのは非常に大きな理解になりました。つまり、誰しもできることは違い、できる形でリーダーシップをとればいいという学びです。 ...
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