訳者まえがき
生成AIやAIエージェントの発展により、企業が保有する情報資産をAIに活用させる取り組みが急速に進んでいます。文書検索やナレッジベースの活用に加え、企業内のデータやシステムをAIエージェントから利用する仕組みも整備され始めています。しかし、そのような環境を実現するためには、AIが「どこに何があり、それが何を意味し、どのような関係を持っているのか」を理解できなければなりません。その基盤となるのが、本書の主題であるメタデータです。
本書は、Ole Olesen-Bagneux著『Fundamentals of Metadata Management: Uncover the Meta Grid and Unlock IT, Data, Information, and Knowledge Management』の邦訳です。タイトルからはデータ管理に関する技術書を想像されるかもしれませんが、本書が扱う範囲はそれに留まりません。IT管理、データ管理、情報管理、知識管理といった企業内に存在する多様なメタデータリポジトリを俯瞰し、それらをメタグリッドという考え方で有機的に結び付けることで、企業全体の知識基盤を構築するという、非常に独創的な視点を提示しています。
本書が執筆された当時は、企業内のメタデータをAIが利用する手段として検索拡張生成(RAG)が注目されていました。本書でもRAGを使用したシナリオが紹介されています。その後、AIエージェントの普及やModel Context Protocol(MCP)の登場により、AIは単に文書を検索するだけでなく、データカタログやCMDBなどのメタデータリポジトリへ直接問い合わせることも可能になりつつあります。本書で紹介されるメタグリッドの思想は、このような新しいアーキテクチャとも非常に親和性が高く、今日では各種メタデータリポジトリをMCPサーバとして公開し、AIエージェントがそれらを横断的に利用する世界を想像しながら読むこともできるでしょう。その意味で、本書の価値は出版当時から失われるどころかAI時代を迎えた現在において、むしろ一層高まっているように感じます。 ...
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