第Ⅰ部思考のシステム
本書は、困難なことに取り組む能力を向上させるための実践、原則、ツール、そして自らが置かれた状況を捉える新しい視点を説明している。ソフトウェアの専門家が直面する関係性はますます複雑化しており、そうした状況に対応するにはシステム思考が必要とされる。ソフトウェアはソフトウェアシステムへと進化している。本書を読めば、システムについて考えるための体系(システム)が身につくだろう。
私たちは線形的に考えるように教えられてきた。そのスキルはソフトウェア開発にも必要である。しかし同時に、非線形的に考える能力も必要であり、従来の還元主義的アプローチが通用しない場合に対応する手法を磨く必要がある。システムの時代に生きる知識労働者として、設計し提供するシステムを考え改善するためのアプローチを模索しているのだ。
私たちが思考する中で生まれる概念は、システム設計の土台になる。それらの概念がうまくかみ合い、システムの目的を支えている状態を、ここでは「概念が統合されている」と呼ぶ。フレッド・ブルックスは「概念の統合はシステム設計において最も重要な要素である」と述べている。概念が統合されていない場合、ソフトウェアシステムは「優れてはいるが独立していて調整されていない構想」に基づいて構築されてしまう。私たちが認識しているか否かにかかわらず、概念のまとまりと相互連関そのものが技術システムの構造を規定している。
システムとして考え、概念を統合していくには、ものの見方を柔軟に切り替えることが欠かせない。学習、他者とのモデリング、システム的課題の根本原因の発見といった実践が、この精神的柔軟性を支える。第I部では、システム思考の基本を紹介し、概念の統合を育む実践を行い、システムとして考えるための思考の転換について見ていく。 ...
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