訳者あとがき
この本をお手にとっていただきまして、ありがとうございます。本書はDiana Montalion氏の著作『Learning Systems Thinking : Essential Nonlinear Skills and Practicesfor Software Professionals』(O'Reilly, 2024)の全訳です。
本書は、システム思考を通して、個人の思考とチーム、組織のあいだを行き来しながら、「考えることそのもの」を問い直していく本です。ただし、読み終わった方の多くは、漠然としたモヤモヤを抱えているのではないでしょうか。そのモヤモヤの原因の一つは「結局、明日から何をすればいいのか具体的にはよく分からない」という感覚だと思います。もしそう感じたのであれば、その戸惑い自体が、著者の意図に触れている証なのだと思います。原題にあるとおり、本書は「システム思考」に関する本であり、「システム思考について学ぶ」ための本です。「学ぶ」と言われると、読むことを通じて何らかが習得できることを期待すると思うのですが、本書は実践において「あれをしなさい」「これをしてはいけません」を指示してくれるものではありません。代わりに本書が読者を連れて行くのは、広大で、あらかじめ地図の用意されていない海のような場所です。そこではむしろ「こうすればいい」と型に当てはめること自体が危うく、考え続ける姿勢そのものが求められます。
そこでは、自分の見方を常に疑い、異なる意見を持つ第三者に対して常に思考を開き、安全な批評家の立場にとどまるのではなく、実際に判断しながら進んでいくことが求められます。それはもしかしたら、本書を読む前よりも、簡単ではない道に感じられるかもしれません。
「苦労が多い」ということは絶望かもしれません。それでも、苦労しながら進むことそのものを否定しない、という著者の姿勢は、そうした試行錯誤を通じて日々仕事をしている私たちにとって、もしかしたら一つの支えになるのかもしれません。私たちも日々の仕事の中での問いを本書の中で何度も再発見し、自分たちの考える姿勢は間違っていないと思えることが何度もありました。それは、正解を「選んでいる」安心とは違いますが、正しい道を歩いている確信には繋がっています。 ...
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