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行動を変えるデザイン ―心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する
book

行動を変えるデザイン ―心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する

by Stephen Wendel, 武山 政直, 相島 雅樹, 反中 望, 松村 草也
June 2020
Beginner to intermediate
464 pages
5h 31m
Japanese
O'Reilly Japan, Inc.
Content preview from 行動を変えるデザイン ―心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する

1

心は次にやることをどうやって決めているのか

熟慮の心理、直感の心理

 人の心がどのように働いているのかについては、見解が分かれている。「人は注意深く合理的だ」という意見と、「人は運よく日々生き延びている感情的な難破船だ」という意見だ。しかも、わたしたちはしばしば、異なるはずの2つの見方を両方とも受け入れている。例えば、自分自身を合理的な人物だと思っていても、敵対する政党や別の部署の連中は感情に流されやすく見える*1

 本当のところ、両方の見解は、誰にもあてはまる。そして、行動を変えるプロダクトの設計を考えていくためには、この事実を受け入れる必要がある。

 わたしたちは脳内に2つの心理のモードを持っている。1つは熟慮の心理で、もう1つは直感の心理だ。心理学者が提唱する二重過程理論(dual process theory)によって、これらの心の働きが理解できる*2。瞬間的で自動的に生じる心の働きが、直感の心理(感情の心理、あるいはシステム1)だ。しかし、内部で直感の心理が動作していることを、普段のわたしたちは気づかない。直感の心理は、過去の経験や一連の単純なルール(親指の法則、経験則、rules of thumb)を使って、ほぼ瞬時に状況を評価する。その評価は、感情や、あるいは“腹の虫(gut feeling)”のような体の感覚によって得られるものだ(Damasio et al. 1996)。過去の経験と関係しているか、似ている状況なら、直感の心理は瞬時にうまく判断できる。だが、過去の経験とさほど似ていない場合にはそれは望めない。

 熟慮の心理(意識の心理、あるいはシステム2)は遅い。何かに集中していて、自覚的な心理だ。わたしたちが「考えている」と思ったら、それはたいてい、熟慮の心理のときだ。わたしたちはこのシステム2のおかげで、あまり慣れていない状況も合理的に分析でき、複雑な問題も取り扱える。 ...

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ISBN: 9784873119144Other