第III部
コンセプトデザインをつくる
ある行動のためにプロダクトをデザインしようにも、頭の中で生じる数百もの認知メカニズムや、想定ユーザーひとりひとりの性格の違いやニーズの多様さ、そして、プロダクトの外見やふるまいについての選択肢の多さにひるんでしまうだろう。
かくも困難に見えるプロセスも、実は小さなかたまり(チャンク)に分ければ扱えるようになる。第2章で説明した、ユーザーが行動に至る以下の5つの前提条件、キュー、反応、評価、アビリティ、タイミングを思い出してほしい。だが、いったいどうやって同時にこれらの5つの前提を揃えればよいのだろうか。
行動するかしないか、という決定は、毎回、特定の文脈のもとで生じる。その文脈は、ユーザー、環境、行動の3つからなる。まず、実行の意思決定は、ユーザー自身の背景、つまり、経歴、パーソナリティ、知識、その他の特性を反映する。また、環境、つまり、プロダクトの動作、周囲の状況、友人や仲間、行動した場合に外部から受けるリワード(もしくは罰)などの影響も受ける。そして、ユーザーがとる行動自体の難易度、行動の組み合わせ、必要な関連作業などによっても変化する。
これらの文脈(ユーザー、環境、アクション)は、ユーザーがCREATEアクションファネルの5つのステージを通過するのを促することもあれば、邪魔することもある。別の言い方をすると、CREATEアクションファネルが「行動が生じるのに何が必要か」を示すのに対し、文脈は「それらの前提条件が実際に揃うかどうか」を示している。
デザインプロセスの目的は、行動を促す文脈をつくり出すことだ。プロダクトは、以下の要素からその文脈をつくり上げていく。
●行動を構造化することで、ユーザーにとって実行可能でやる気が起きるものにする。 ...