17章ゲームの要素を取り入れる
危機的状況に陥ったマネージャーにとって強力な武器になるのが、ホワイトボードである。ホワイトボードがあれば、新鮮な発想が得られることが多い。
面白いことに、私がこれまでに働いた会社には、たとえどんな小さなスタートアップ企業にもホワイトボードはあった。たいていは、さほど大きくないものだ。車輪つきで、あちこちに簡単に運べる。パーティションで区切っただけの狭い会議室にちょうどよかった。元々は誰のものなのか、わからなかったけれど、私は何か困った時には、いつもホワイトボードを使っていた。
困った事態、というのは何が原因で訪れるかわからない。時間がないからと手間を惜しんだせいかもしれないし、明確にすべき仕様を明確にしていなかったせいかもしれない。あるいは、前から問題の存在に気づいて警告を発していたエンジニアがいたのに、無視していたのかもしれない。無視している間に問題は大きくなった。原因は何であれ、ともかく、目の前に大きな問題がある。バグが次々に見つかるのだが、修正は遅々として進まない。第一、システムにはまだ追加しなくてはならない機能が数多くあるのだ。
間違いなく、悲惨な状況である。
良くないことが続けば、チーム内の人間関係も悪くなる。3週続けて、土日も出勤しているというのに、まだまったく終わりが見えない。普段は、悲観的なことを言いながらも、楽しく仕事をするエンジニアたちも、すっかり静かになってしまい、実に居心地の悪い空気になっている。絶対に間に合わせなくてはならない期日は、誰もが認識している。だが、誰もが「間に合わないだろう」と思っている。
このままではいけない。
ゲームの面白さ
エンジニアというのは、基本的に「システム思考」をする人間である。この世界は非常に複雑だけれども、物事の動きはすべてフローチャートで表すことができる。どのようなフローチャートが存在するかはすべて知ることができる。限られた数の入力から、常に限られた数の出力が生じる、そんなふうに世界を見ているのだ。実際には、この混沌とした世界をすべて理解し、制御できるようなフローチャートなど存在しない。それは甘い幻想にすぎなのだが、その存在を信じていれば、それは生き方のすべてに副作用を及ぼすことになる。そのフローチャートを基に、世界について推論し、そのフローチャートをもとに物を作ろうとするからだ。エンジニアの多くがゲームを愛するのはそのためだ。ゲームは確かに有限のフローチャートから成り立っている。そのゲームを愛し、深く知るようになるほど、うまく制御できるようになるだろう。 ...
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