46章不安な将来
この本の読者は、きっと大半が仕事熱心な人だろう。
これまで、すでに豊富な経験を積んできた人も多いに違いない。経験を積むと、物事の判断がしやすくなる。経験は自信につながるのだ。自信があれば、勇気ある決断もできる。周囲の人は、そんな姿を見て、「あの人は頼りになる」と思ってくれるだろう。先行きが不透明な時ほど、自信は助けとなる。自信というのは、理屈で割り切れるものではなく、極めて感覚的なものである。いくつもの困難をくぐり抜けることで、自然に身についていく。そして、それが決断の土台となる。
ただし、経験にも寿命はある。
経験を積み、自信を持った人は、きっと仕事に成功するだろう。成功すれば、皆が称賛する。褒められればさらに自信は深まり、それがまた成功につながる。そういうサイクルが生まれるのだ。
読者の中には、そうやって何度も成功を収めてきた人も多いに違いない。
成功、称賛、それもやはり経験の一種である。その経験で自信がつく。ただし、称賛されたのは、あなたに自信があったからではない。称賛されたのは、あなたが何か価値あることをしたからだ。称賛と自信には直接の関係はないのである。
どの世界にも言えることだろうが、特にハイテク業界には、そのあたりを勘違いしている人が多い。成功した、称賛された、という事実のみを強調する人が多いのだ。カンファレンスで講演する時、インタビューされる時、本を書く時なども、自分はこれまでいかに成功し、人に称賛されてきたかということばかりを話したり書いたりする。確かにそういう成功物語にも価値はあるし、面白い。しかし、徐々に、その人が何をしたかには関係なく、その人の名前ばかりが一人歩きを始めるようになる。その人の業績は二の次になっていくのだ。
読者の中には、そういう人はいないかもしれない。だが、そうなる危険性は誰にでもあるのではないだろうか。たとえば、過去の成功体験を安易になぞるようなことをしていないだろうか。成功は気分の良いことだが、いつまでもそれに浸ってはいられない。常に新たなことを挑戦していかねばならないのだ。 ...
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