30章無意味なこと
シリコンバレーにいると、大変な量のカロリーを消費する。
日々の仕事にエネルギーがいるのは当たり前だが、それだけではない。ただ、そこで生き続けるということ自体が大変なのだ。街そのものが絶えず生まれ変わっているので、それについていかなくてはならない。新しいサービスが次々に生まれるので、その度にサインアップして、「重要なものか否か」を見極めなくてはならない。見極めには最低でも、3、4分はかかるだろう。Webで検索をする、Xにポストする、Slackに書き込む、あらゆる手段を駆使して情報を集める。すると、あっという間に大量の情報が流れ込んでくるので、それを分類し、ふるいにかけ、評価しなくてはならない。
同じようなことにカロリーを消費している仲間は大勢いる。彼らは、代わる代わるあなたのオフィスにやってくる。あるいは何らかの手段で連絡をしてくる。そうして、情報を提供し、新たなカロリー消費の原因を作るのだ。「こんなの知ってる?」、「これは試してみないと」、「すごいよ。絶対に喜ぶと思うから、すぐに使ってみて。使うまで帰らないよ」などと色々なことを言われる。
ITの業界にいる人間は皆、新しいことが好きだ。いつも、目新しいこと、心沸き立つことを探している。そして「効率が上がる」というのに弱い。それ自体は何も悪いことではない。だが、それにばかりかまけていると、時間をとられて、かえって物事が停滞してしまう。バランスを取るために、時には何も新しい情報を取り入れない静かな時間を設ける必要があるだろう。
私が書店に行くのはそのためである。
目標が明確でないことをする難しさ
書店の良さ、それは中に入るとすぐにわかる。その知的な落ち着きはまるでオアシスのようでもある。数多く並んでいる本、その美しいカバーの裏側には、きっと素晴らしい発想、可能性が隠れているのだろう。その静けさに畏敬の念のようなものを抱く人も少なくないと思う。書店の中で大声を出す人はあまりいない。書店の中で、声を荒げて自説を主張するような人は少ないのだ。 ...
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