
ix
マーティン・ファウラーによる
序文
大きな要件の塊を、小さなチャンクに分割する考え方が普及したのは、アジャイル
ソフトウェア開発の普及に火がついて良くなったことのひとつだ。チャンク(ストー
リー)により、開発プロジェクトの進行状況は格段にわかりやすくなった。ストーリー
単位で製品が構築され、個々のストーリーの実装がそのソフトウェア製品に完全に統
合されていけば、製品が成長していることを、誰もが見ることができる。ユーザーに
もわかるストーリーを使っているので、開発者は次にどのストーリーを構築するかを
決めることによって、プロジェクトの舵を取ることができる。可視性が大幅に向上し
たため、ユーザーはとても参加しやすくなった。開発チームが取り組んでいる仕事を
見るために、もう
1
年以上も待たなくて済むのだ。
しかし、このチャンクへの分割にはマイナスの効果もある。ソフトウェアシステム
が何をすべきかについての全体像が、見失われがちになったのもそのひとつだ。首尾
一貫した全体にならず、かみ合わない部品の寄せ集めを作っただけで終わる危険があ
る。あるいは細部に埋没してしまって必要な本質の部分を見失い、ユーザーに役立た
ないシステムを作ってしまう場合もある。
ストーリーマッピングは、ストーリーの山を作ったとき、とかく見失われがちな全
体像を提供するためのテクニックである。
本書に書かれたことを一文で説明すると、そうなる。そしてこの一文には、重要な
約束が含まれている。全体像を示すことができれば、ユーザーと効果的なコミュニケー