
訳者あとがき
私たちを取り巻くビジネス環境は、かつてない速度で変化しています。また、クラウドサービスは
日々進化し、有用な機能やサービスが次々と登場しています。その結果、単一のクラウド上でシステ
ムを構築するだけでなく、複数のクラウドサービスを組み合わせ、さらに既存のオンプレミス環境とも
連携させる「ハイブリッドクラウド」が、ごく当たり前の選択肢となりました。多くの企業にとって、も
はやそれは特別な構成ではなく、現実のビジネスを支える上で自然な姿になっています。
一方で、各クラウドベンダーは、自社サービスを安全かつ効果的に利用するためのベストプラクティ
スを積極的に提供しています。しかし、現実の企業システムは、単一の製品や単一の環境だけでは完
結しません。また、技術、予算、プロセスなど様々な制約から、各クラウドベンダーが示すベストプラ
クティスをそのまま踏襲できないこともあります。言い換えれば、複数のクラウド、既存資産としての
オンプレミス、自社特有のリスク選好、保有するデータの性質、利用可能なリソースといった制約を踏
まえながら、全体としてどのようにアーキテクチャを設計していくべきか、考えなければなりません。
その問いに正面から向き合い、実践的な道筋を示してくれる書籍は、これまで存在しなかったように思
います。
本書の価値は、まさにそこにあります。本書は、ハイブリッドクラウド環境において、どのようにセ
キュリティアーキテクチャを考えていくべきかを、一連の思考プロセスとして丁寧に示してくれます。
読者