
283
14
章
最先端を行く:文献案内
本書ではさまざまな量子コンピューティングの問題を紹介しました。実際にいろいろ試してみて、存
分に楽しんでいただけたでしょうか?
本書を終えるに当たり、紙面の関係でこれまで触れられなかっ
た話題をいくつか簡単に紹介し、量子コンピューティングのさまざまなトピックスについて、さらに多
くのことを学ぶための手がかりを提供したいと思います。ここでは詳細まで深く説明することはできま
せんので、これまでに学んだことと本書の範囲を超える題材との間を橋渡ししたいと思います。本書
で養った感覚を、量子プログラミングという探検の足がかりとしてください。
14.1
円表示から複素ベクトルへ
本書を通じて量子レジスタの状態を表すために用いてきた
∣
x
⟩
表示はブラ - ケット表示、あるいは
ディラック表示と呼ばれます。後者の名称は、
20
世 紀 の 物 理 学 者 ポ ー ル ・ デ ィ ラ ッ ク(
Paul A. M.
Dirac
)の偉業に敬意を表するものです。量子コンピューティングの文献では、一般的に量子状態を表
すために、円表示ではなくブラ
-
ケット表示が使用されています。
2
章では、この
2
つの表示が等価で
あることを示す説明をしました。これについては、もう少し説明したほうがよいでしょう。単一キュビッ
トレジスタ内の一般的な重ね合わせ状態は、ディラック表示で
α
|
0
〉
+β
|
1
〉
と表されます。ここで
α
と
β
は状態の振幅であり、式
|
α
|
2
+
|
β
|
2
=1
を満たす複素数です。これまで用いてきた円表示では、それぞ ...