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K A I Z E N J O U R N E Y
Ep il og ue
Epilogue
自分の世界を広げる
品川の一角にある、ひなびた居酒屋で二人は飲んでいた。
「江島はどうだった?」
傍らに酒を注いでいるのは蔵屋敷であった。その相手は、袖ヶ浦。
「さすがだね」
蔵屋敷が育てただけはある、と続ける。
「まあね」
謙遜するそぶりなど、この男は見せない。
「試してみたかったんだ。境界ある開発から脱却するためには越境が不可欠。組
織の間で、それが本当にできるのか、どうか」
そう言い終わるより早く、蔵屋敷が袖ヶ浦の言葉を否定した。
「いやいや、ただの嫉妬でしょ」
蔵屋敷は、袖ヶ浦には遠慮しない。古い付き合いだから、お互いに気を使わな
い。
「理想的な開発を実現するために事業会社に転職したものの、事業会社の中は従
来型の開発から変わる気なんてかけらもない。開発はベンダーに丸投げ、しかも、
あらかじめスコープを決めきらないと発注は許されない。仮説を立てて検証して
アジャイルにサービスつくる、なんて夢のまた夢。絶望だわな」
袖ヶ浦は微かに笑った。蔵屋敷に言い当てられたとおりだった。
「そんな絶望の中、現れた一人の向こう見ずな男。境界なんてものともしない。
どんどん突破する。その様子がまぶしくて、そして嫉妬もした。だから、自分の
思いとは裏腹に、あいつを試す行動を取ってしまったんだろ。自分の考えが正し
かったか、証明してくれーって」
本当は、むしろ、彼とスクラムを組んで、やりたかったのに。自分の会社で、
変わるきっかけが向こうからやってきたというのに。 ...