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5 章
統計分析
統計学を使って嘘をつくのは簡単だが、統計学なしで嘘をつく方がもっと簡単だ。
— フレデリック・モステラー
白状するが、私は統計学者と心から満足のいく会話をしたことがない。試した回数が少ないからというわ
けで
はない。この数年で何度か興味のある問題を統計学者に話してみたことがあるが、返ってくる答えは、
「こうすればうまくいく」というようなものではなく、いつも「そんなやり方ではダメだ」とか「でもそれは
独立ではない」といったものだった。
公平に見て、話しかけた統計学者たちは、一般的に私と話すのも嫌そうだった。統計学者は、計算機科学
者よりもずっと前からデータについて真剣に考えている。そしてそのことを示す強力な手法やアイデアをた
くさん持っている。この章では、基本的な分布の定義や統計的有意性の検定方法など、統計学者が持つそれ
らの重要ツールの一部を紹介する。また、この章では、将来の事象に対する従来の推定に、新しいデータが
どのように影響を与えるかを厳密に評価する手法の 1 つであるベイズ分析も紹介する。
図 5 -1 は、統計学的な推論のプロセスを示している。潜在的に観測できるものの母集団がある。実際に
は、母集団の比較的小さな一部だけを標本抽出する。標本抽出は、無作為に、つまり標本抽出された要素の
性質を観測してもよいように行われることが望ましい。確率論は、母集団の性質に基づいて、標本がどのよ
うな性質を持つかを推測する。しかし、統計的推測はそれとは逆向きに、標本の分析に基づいて母集団がど ...