訳者まえがき
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訳者まえがき
本書は、ある製品やサービスがもたらすユーザー体験を、複数の異なるデバイス上でどの
ように展開すればよいかを論じた本です。世の中にUIやUXに関する本は数多く存在します
が、このような視点で語られている書籍は多くありません。その意味で、Googleの現役UX
デザイナーが自身の経験と豊富な事例に基づき、マルチデバイスをめぐる現状と将来につい
て語る本書は貴重な存在と言えるでしょう。
デジタルデバイスの歴史は、新たな技術や機能に応じた専門化/多様化と、単一プラット
フォームへの収束との間のせめぎ合いと捉えることができるかもしれません。1990年代から
2000年代にかけて、PCがその汎用性を武器に、あらゆるアプリケーションを実行できるプ
ラットフォームとしての地位を確立した後、今度はスマートフォンが、デジカメ、音楽プレー
ヤー、ゲーム機などの機能を取り込みながらその立場を継承しています。
現在、デジタルデバイスをめぐる状況は再び混沌に向かいつつあります。
モバイル向けのアプリ1つ作るにしても、iPhone版だけ用意すればよかった時代は過ぎ、
今やAndroidとiOSの両方に対応しなければ多くの人にリーチすることは難しくなっていま
す。さらに同じOSと一口に言っても、スマートフォンもあればタブレットもあり、その大き
さや解像度、使われ方も異なります。スマートフォンはますます大型化する一方、タブレッ
トは小型化が進み、その境界はもはや曖昧です。加えて、スマートフォンは自身を軸として
さまざまなデバイスと連携するようになり、その対象はテレビやスピーカーなどのAV機器の
みならず、ウォッチやリストバンド、グラスといったウェアラブルデバイス、ひいては家やク
ルマに至るまで、極めて多岐にわたっ