
この公式の背後にある数理を理解していなくても、幸い意味するところはわかる。
デザインに適用してみれば至極単純な話で、ユーザーがインターフェースとやり取
りするのにかかる時間は、とりうる選択肢の数と相関する。ごちゃついたインター
フェースは、ユーザーの意思決定にかかる時間を長引かせる、ということだ。なぜ
なら、ユーザーはまず、とりうる選択肢のうち、どれが自分の目的と関係している
のかを処理しないといけなくなるからだ。
インターフェースが混雑しすぎていたり、アクションが曖昧で識別しづらかった
り、重要な情報が見つけづらかったりすると、探しものを見つけようと思考の負担
が増えてしまう。これが、ヒックの法則の鍵となる概念である認知負荷につながっ
ている。認知負荷については、ミラーの法則の章で触れている。
選択肢が増えれば増えるほど、決められなくなり、面倒くさくなることにお気づ
きだろうか。品数が多すぎるレストランのメニューが、まさにそれだ。両手で数え
られる程度の場合と比べると、格段に思考の負担がかかってしまう。選択肢は多け
れば多いほど良いという一般的な思い込みと裏腹に、真実はその反対で、「選択肢
過多」
*1
に陥ってしまうのだ。
昔と比べて選択肢は格段に増えた。なのに、ちっともうれしくない。これぞまさ
に選択のパラドックスである
*2
。バリー・シュワルツが広めた選択のパラドックス
は、1950年代の心理学者ハーバート・A・サイモンのアイデアを消費者の誰もが直
面する心理的ストレスに関連づけて説明したものだ。
選択肢が多いほうが少ないよりも内発的な動機につながるはずだ ...