
平たくいうと、人間はありとあらゆるものに注意を奪われている。わたしたちは
四六時中、知覚情報にさらされている。車を運転しているとき、仕事をしていると
き、社交行事に参加しているとき、あるいは単にオンラインで買い物をしていると
きでも、ほとんどの人が自分の注意を妨げる多数のシグナルを受け取っている。
わたしたちは、視野の中にあるものすべてをいつも見ているわけではない。何に
注意を向けているかによって、わたしたちが周りの世界をどう把握するかが変わっ
てしまうからだ。重要もしくは目下抱えている仕事に関連する情報に集中するため
に、わたしたちは関係ない情報をしばしば無視する。つまり周囲への集中力のキャ
パシティと持続時間の制約から、関連性のない情報を犠牲にして関連する情報に集
中するのだ。これは認知心理学では「選択的注意」
*4
として知られている生存本能
であり、人間が周囲の世界を認識する方法にとどまらず、生死を分ける危機的な瞬
間の感覚情報を処理する方法においても重要である。
第3章でミラーの法則と短期記憶の能力について見た通り、注意力もまた限られ
たリソースだ。記憶と注意力の概念には様々な整理の仕方があるが、心理学の世界
では、ワーキングメモリが注意力と密接に関連していることが大枠で合意されてい
る
*5
。特にデジタルのプロダクトやサービスにおいてこれは重要な意味を持つ。な
ぜならインターフェースは人の注意を適切に導き、ユーザーが困惑したり気が散っ
たりせずに関連する情報を見つけて作業できるようにしなければならないからだ。 ...