
CHAPTER 5
事例
ポステルの法則に基づくデザインアプローチは、ヒューマン・コンピューター・イ
ンタラクションの哲学に非常に近い。すなわち、ユーザーの入力内容、利用環境、
スキルや知識について、実際に起こりうるあらゆるパターンを予測することで、信
頼性やアクセシビリティが担保されたインターフェースを提供すべき、という考え
方だ。この哲学を示す例は数え切れないほどあるが、ここではデジタル世界ではあ
りふれた「入力フォーム」から見ていこう。フォームは長らく、デジタル空間でシ
ステムに情報を提供するための主要な手段となっている。突き詰めて言えば、
フォームは人間とシステムがインタラクションするための媒体である。プロダクト
やサービスが何らかの情報を要求し、ユーザーはそのために用意されたフォーム要
素を通じて情報を提供するのだ。
ユーザーに求める情報はできる限り控えめに。これが、ポステルの法則をフォー
ムに適用する上で最初に考えるべき事柄だ。入力すべき項目が多ければ多いほど、
ユーザーは認知エネルギーと労力をより多く消費することになり、意思決定の質が
落ちて
(「決断疲れ」
*4
として知られている)
、フォームを完遂できなくなる。絶対に必要
なものだけを求め、メールアドレスやパスワードなどシステムがすでに持っている
情報は求めないことで、フォームに記入する手間を最小限に抑えよう。
次に、フォームによる制限について考えよう。例えば、姓と名の順番は文化的規
範によって変わる。「姓>名」の順で書くことに慣れている文化圏のユー ...