
CHAPTER 7
良くないことだといわれつつも、実際にはわたしたちは本を表紙で評価してしま
うことがある。だがそれは、悪いも何も必然なのだ。自動認知処理のおかげで、わ
たしたちはすばやく反応できる。周囲のあらゆる物体を注意深く処理するのは時間
がかかり非効率的で、状況によっては危険ですらある。そのためわたしたちは知覚
したものに意識的な注意を向ける前に心の中で情報を処理し、過去の経験に基づい
て方針を決め始める。この無意識で自動的な思考モードは、続いておとずれる意識
的で遅い思考モードとは対照的である。心理学者であり経済学者でもあるダニエル・
カーネマンが2013年の著書『Thinking, Fast and Slow』
(『ファスト&スロー上巻 /下巻』
村井章子訳、早川書房、2012年)
の中で解き明かしたことだ。システム 1とシステム2と
いう2人の登場人物が織りなす心理劇は、認知処理が2通りあることと、意思決定
への影響について明らかにしてくれる。
システム 1 は衝動的に動作し、ほとんどまたは全く心理的な努力を必要としない。
迅速で、意図的に制御できない。他の動物とも共通した生まれつきの能力の 1 つで
あるこの思考モードのおかげで、わたしたちは経験や長期の訓練に基づいてものを
認識し、危険を察し、注意を向け、損失を避け、すぐに反応する、といった一連の
行動が可能になる。システム 1 は自動的に動作しシステム2のための情報
(直感、感情、
意図、印象)
を生成する。
システム2は、よりゆっくりと動作し精神的な努力を必要とする。システム ...