
第6章では「認知バイアス」について扱った。認知バイアスは置かれた状況に対
して徹底的な分析をせず、迅速な意思決定を促し、能率を高めるための心理的ショー
トカットとして機能している。つまり、複雑な問題解決や創造的思考など重要な局
面に向けて精神的なエネルギーを節約してくれている。わたしたちは認知バイアス
から非常に多くの利益を得ているが、そこには記憶、判断、意思決定における誤り
につながるという欠点もあるのだ。
「 複雑性バイアス」とは、シンプルな解決策よりも複雑で入り組んだ解決策を好
む傾向のことだ。多くの場合、複雑であることが知性や専門知識、深い理解などと
結びつけられるために起こる
*4
。
簡単に言えば、わたしたちは、混乱しているときや十分理解する時間がないとき
に、複雑な概念を過大評価したり、簡単に理解できるものを複雑で難しいものとみ
なしたりすることがよくあるのだ。この誤
ご
謬
びゅう
は、ヒラリー・H・ファリスとラッセル・
レヴリンによる1989年の論文で明確に実証されている
*5
。
論文で示された実験の1つは以下のような内容だ。まず、被験者は3つの数字を
提示される。そして数字の並びにどんな規則性があるかを問われる。被験者は他の
数列を挙げて規則性に合致しているかどうかを質問することもできる。実は答え
はとても単純で「昇順になる3つの数字」だった。被験者は「1、2、3」と か「 3、7、
99」のようなものを挙げさえすれば正解だった。しかし、ほとんどの人はそんなに
簡単な規則性だとは思わずに、代わりにも ...